「顧客」と「クライアント」 ①

最近、わたしが経験したことです。

わたしが冬支度のため、カーディーラーでタイヤ交換をお願いしたときのことです。「サマータイヤに少々ヒビが出来はじめていますので、来シーズンは新しいタイヤで」と営業がサマータイヤをすすめてきます。「なぜ、今すぐに使わないのに?」と理由を尋ねると、わたしの「現在のタイヤは4年前のもので、ゴムの経年劣化が激しいです。そして今日サマータイヤをお求めになると現在の販売価格から30%オフで提供出来ます。いかがしょう?」30%オフだから今日買えと・・・で、「そのタイヤの製造はいつ?」とわたしが問うと「製造は3年前です。」「?」ゴムの経年劣化が4年と説明しておきながら3年前のタイヤ、間違いなく売れ残りを売ろうとしています。営業の話を信じると、1年間ほどでダメになる恐れのあるタイヤをわたしに売ろうとしている。タイヤに耐久性を求めているわたしに。在庫が捌ければいいという理由だけで。ここではタイヤを購入しませんでした。もちろんタイヤは必要なので、他で最新モデルの新しいタイヤを購入しました。

ジェイ・エイブラハムのマーケティングコンセプトの中で特徴的なのは「卓越の戦略」である。彼は「顧客」のことをあえて「クライアント」と呼びます。


顧客(カスタマー) ・・・ 消費やサービスを購入する人
クライアント ・・・ 他の人の保護下にある人

この概念の違いは、「卓越の戦略」を理解する上でとても大切です。あなたのビジネスの相手がどう扱われるべきかというこも大きく変わってきます。あなたの「保護下にある」とは、一回の取引で最大限の儲けを増やすためだけに、相手に必要のないものを売ったりすることはしないということです。

先ほどのカーディーラーはわたしを「顧客」として扱いました。明らかに型落ちの売れ残りの処分品をわたしにすすめてきました。タイヤ交換のついでに半年は必要のないタイヤを。

クライアント」として扱われるとどうか?

わたしはタイヤに耐久性を求めています。

「サマータイヤに少々ヒビが出来はじめていますので、来シーズンは新しいタイヤで」とここまでは一緒です。「もし安いタイヤをご希望でしたら、3年前の型落ちですが、現在の販売価格から30%オフで提供出来ます。もちろん次回のタイヤ交換までにタイヤを組み替え、無料で保管します。」、そして「耐久性が気になるのでしたら、次回のタイヤ交換が近づいたときに、タイヤの最新モデルの資料を送ります。またタイヤをご購入の際には、無料でオイル交換もいたします。ご検討願えませんでしょうか?」これならわたしも他より少々高くても買ってもいいかなと思います。

お分かりでしょうか?

これは一つの例ですが、「顧客」として扱われた場合には、売り手の都合しかなく、購入者側のニーズは無視です。しかし「クライアント」として扱われた場合は、売り手側の都合ではなく、購入者側のニーズの解決策がありました

あなたもタイヤの購入が必要といきなり言われて、今すぐに必要のない高額なものの購入を迫られれば、「ちょっと待ってよ。検討させて」と思うはずです。しかも3年前の型落ち商品ということを聞くまで伏せられ、こちらのニーズを満たせなければなおさらです。

ただ安いものが欲しいのか?最新モデルが欲しいのか?購入の際に、どこを重要視しているのかは相手にしか分かりません。ここで判断を間違えれば、顧客として接することになります。だからこそ、あなたは自分のクライアントが、明確に欲しいものを説明できない時でも、クライアントが必要としているものを正確に理解し、把握する必要があります。
そして相手の欲しがっているものが分かったら、あなたは相手をそこに導くだけです。
これで、あなたは相手にとって信頼できるアドバイザーとなり、相手はあなたの保護下にあることになります。そしてずっとあなたのクライアントになるのではないでしょうか。

「ハイパワー・マーケティング」ジェイ・エイブラハム著
金森重樹監訳 参照